ミニアルバムの楽曲制作が進んでいた最中にお話をいただきました。アレンジまでは固まっていたのですが、ミニアルバムとしてのバランスを考えもう少しアレンジを考え直したいなと思っていたので、ちょうど良い機会になりました。そこで「もし山田リョウであれば、タイアップの話が来たときにどういうアレンジをするだろうか？」と想像して再度アレンジに臨みました。『い･ろ･は･す』から連想する「イメージカラーのグリーンや、透明感・爽やかさを表現したい」といった考えで、TVシリーズのときに文化祭に合わせた曲を作れた山田ですから、コマーシャル曲でありつつも、ロックバンドとしては譲らないみたいなような、せめぎ合いが出せたらと思いながら編曲をしていきました。

役で歌うって、改めて面白いなと思います。私はまず普通にメロディーを覚えるところから始め、その後で結束バンドの喜多郁代として歌に向き合うのですが、そう心を決めてから口に出すと、練習で何度も聴いていたはずなのに、感じ方がまったく変わるんです。作中のできごととして想像すると、ぼっちちゃんが「新曲の歌詞が書けました」と言って渡してくれたノートを喜多ちゃんが読む。それって、後藤ひとりの心の内を見るという行為なわけで、最初の「太陽のレッド　深くなるブルー　瞬くイエロー」あたりからもう、「ひとりちゃん、そう思ってたんだね……」って、泣けてくるんです。

「鬱向いて塞いでた僕を見つけ出してくれたあの日を」なんてもう、こんなんズルくないすか!?（笑）。日々の色彩や心情、仲間意識を美しく描いていて、最後に「こんなん全然聞いてない！！」と、ちゃんと落としてくる感じがひとりっぽくて、すごく好きですね。

これまで結束バンドの曲ではコーラスワークを大々的に押し出すことをそこまでしていなかったので、そのあたりの感覚が頂戴したイメージとピッタリでした。間奏も、リョウさんと喜多ちゃんが何声もコーラスしていく感じで、ここは当初はコーラスだけだったのですが間奏の直前の、「濁っていく」の歌詞に合わせてギターを入れてうるさくしています。

僕もそこはミックスのときにディレイをかけて、もっと濁らせようと思ったんだけど、「これ、『い･ろ･は･す』のタイアップだった」と改めて思い直して。

（一同爆笑）

『い･ろ･は･す』は、濁りから一番遠いものだから！（笑）。そんなふうにロック性とその爽やか性みたいなものが上手く共存できたらいいなと思いました。

2番の「僕の苦しい、悔しい、虚しい　感情の色彩が　胸の中ループしている」の部分は、レコーディングの途中で歌メロが変わるという経験をしたのが珍しかったです。

普段は作詞家と作曲家は別々に作業をするのですが、トビー（飛内将大）が歌入れのときに来てくれて、歌詞に合うようにその場で対応してくれたんです。そこは編曲では触れない部分ですから助かりました。

リアルタイムでどんどんブラッシュアップされていく感じが印象的でした。歌詞に関しては先ほどの単語に合わせた感情も込めつつ、喜多ちゃんマインドで歌ったので、晴れやかというか嬉しい気持ちも入れつつ、他の曲とちょっと違うアプローチになったと思います。

※「い･ろ･は･す」はThe Coca-Cola Companyの登録商標です。

この曲は『月並みに輝け』の後に作り始めました。バランスを考えると、スローバラードっぽい曲が良いのではないかと、音羽-otoha-さんと話をして書いていただきました。

いわゆる下北ギターロックバンドってアコギをよく使うので、いつか作りたいと思って、フルアルバム「結束バンド」の頃からネタ帳には忍ばせていたんです。アルバムのときは全体的な構成がロックだったのでお預けだったのですが、YAMAHAさんとのコラボで作られたクリアファイルに、喜多ちゃんがアコギを持つ姿が初めて描かれて、今こそそのタイミングだ、と。

メロが良すぎて、音を足したくなるのを我慢するのに苦労しましたよね。

実は当初、エレキギターのバージョンで作ったんです。音を足して厚くすればするほど壮大な感じは出せるけれども、この曲にはノスタルジックな感じがほしくて、そこでアコギを使おうとアイディアが降ってきて、このアレンジを組み立てていきました。

歌詞については、具体的なお願いは今回はせずに1コーラスが出来上がってきていたので、そのままフルサイズにブラッシュアップしていただく流れでした。そうしたら音羽-otoha-さんが、「置いて“いくよ”」、「“虹”×モノクロ」、「“猟”奇的」とメンバーの名前を入れた歌詞を書いて下さったんです。歌詞は律郎さんの音にもインスピレーションを与えていて、秒針を感じさせるようなリムショット（太鼓の縁の部分を叩くこと）や、時間をリバースさせるような音を入れてくれました。

壁一面にメンバー写真貼るようなことする子だから、こういうのを書くよね（笑）。

シンプルに言って、好きな曲です。

1stテイクから完成していましたよね。

僕も音羽-otoha-さんも歌入れに立ち会ったのですが、感動しましたね。歌を纏っていたというか。

結束バンドでバラードは歌ってこなかったので、難しかったですね。特にギターソロが終わった後の落ちサビ。一通り録って皆さんと聴いてみたときに、確かに上手く歌えてはいるけれども、感情的になりすぎていて、「これは喜多ちゃんではないよね」と。これまでは基本的に、後藤ひとりの思いを歌うという気持ちで私は歌ってきたのですが、ここは喜多ちゃんの気持ちを歌おう思ったんです。喜多ちゃんも「このまま時が止まれば私ずっとここにいたいよ」って思ってるよ、と。

あのときグンと喜多ちゃん解像度が高まりましたよね。

その直前の後藤ひとりのギターソロから受け渡された歌を長谷川さんがとても上手に表現してくださいました。

後藤ひとりの言葉なんだけど、それはひとりだけが思ってることではなく、私（喜多）も思っているよという、ひとりに向けた気持ちを込めたところ、自分の中でもしっくりきて、納得のいく表現で歌うことができました。